楝の妖精/
丘白月
誰もいない静かな高原
雨に濡れた五つの花弁
獣道に紫色の風が舞う
月は山に隠れ
見えるのは六連星だけ
一人分の星の束
墨があれば忘れずに
言葉を残すのに
草に隠れて手を伸ばせば
蛍の天の川
楝の妖精が内緒で
香を焚いてくれる
逢えない人々が
心配そうに振り返り
頬を流れ落ちる涙を
蛍がひろっていく
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