ムーラン・ルージュの妖精/丘白月
 
パリの妖精
第3話「ムーラン・ルージュの妖精」



サクレ・クール寺院のてっぺん
十字架に座って街を眺め
星がやってくれば人ごみに紛れ
出来たばかりの赤い風車を覗く

貧しい画家と踊り子たち
薄暗いランプの下で
昨日のことは話さない
今日の中にだけに生きている

絵筆を追いかけ
ドレスと一緒に飛び回る
粗悪なアブサントの匂い
舐めただけで赤い顔

今日から明日へカチッと
時が音をたてる
先の錆びた時計の針は
妖精のいたずら
消えたマッチ棒


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