別種/ねむのき
 
少女の頭の中に象が住んでいる。作文をしている時、句読点をどこに打ったらいいか、背後からそっと教えてくれる白い象だった。ある日、少女は工作の授業で作った押し花を、象にプレゼントすることにした。少女の差しだした押し花に、幼児の腕のように白く柔らかい象の鼻が触れた瞬間、青空いっぱいに微細な三角形で構成された幾何学模様がひろがった。それはまるで稲妻のような一瞬の出来事だったけれど、少女はその日から象のことがますます大好きになった。
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