一欠片のひかり/長崎螢太
 
ひかりのつくり方は だれも教えてくれない



水の配合を間違えたことで 白く霞む朝に
きみの浅い微睡みは
錆びたダイヤモンドのように 美しく堕ちていく
レースをまとった瞳の透過は
いくつかの色を失っているだけで
直すことは 難しいことではなかった
しかしそれは 欺瞞かもしれない



ほころびて弛緩した寝室に
いくつもの抜け殻のような夢が 横たわっている
ニスで塗り固められて硬直した朝を おしこめる
そこから パラパラと捲れて落ちていくのは
昨夜の幻想だったのだろうか



冷え切ったダイニングキッチンのすえた匂い
いっそこのまま カーテンを永久に開けなければいい
ひかりのない部屋のなかで 換気扇の音だけがやけに響く

願わくば わたしたちの夜明けの方向が
澄みきったひかりへ繋がればいいと
そんな 一欠けらのひかりに とどいたら


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