君よ、空は明るい/ホロウ・シカエルボク
 
「でもそれはただただ悲しい」
今度は俺が困って見せた
「どうすればいいんだろう?」
「なにもかも諦めるしかないわよね」女は駄洒落でも言うかのように笑いながら話した
そして消えた


踏切の音が聞こえる
特急列車が自慢している
ふたつの灯りははるか先を照らし
そのすべては予定通りだ
それは素晴らしくもあるが
とても愚かしくもある
聖書を真実だと吹聴する
ガラス球のような目をした連中と同じ美徳と穢れだ


君よ、空は明るい
嗚呼、眩しい
水晶体は蒸発して
そこから記憶が噴火する
俺は名前を忘れ
なのに自己紹介を繰り返す
どうかあなただけは
俺のことを忘れてしまわぬよう








君よ、空は明るい

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