ゴシック的断片/佐々宝砂
 
師ベックフォードによる所見。
患者は十九歳の女性、未婚。
発作は幼児期から見られたが十二歳でいったん快癒し、
十九歳になってから発作が再開した。
発作前兆期には体液貯留が見られ、
患者は視野右側の視覚異常と被帽感を訴える。
発作がはじまると顔面は蒼白となり呼吸は浅く荒くなり、
唇に強いしびれと錯感覚が生じ激しい頭痛がはじまる。
頭痛は三時間ほど持続する。
発作終息期には体液の放出が甚だしい。
嘔吐、大量の薄い尿の排泄、流涙、流涎、下痢ののち、
しつこい不自然な眠気が襲い、患者は昏睡に近い眠りに落ちる。
発作は周期的なヒステリー性のものと推測され、
蛭によって胆汁質の体液を
[次のページ]
戻る   Point(4)