片われの夢/帆場蔵人
 
を帯びて、ふと、現れるのだった

帰郷の頃には汽車はなく電車が走っていた
帰ることで故郷は失われていき帰ることで
片われを求めていたあの日を思いだす

片われをなくした
ビーチサンダルが
木陰でみる夢は

※名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ

夕暮れの陽とともに沈んで
ひとりひとりの胸に仕舞われる
片方だけのビーチサンダル




※島崎藤村 作・椰子の実、より引用
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