次郎狸/北村 守通
 
どなたかいらっしゃいませんでしょうか?」
と女の声がするではないか。
急いで戸を開けてみると。そこには色白の美しい娘が一人震えながら立っていた。

「いかがなさいましたかな?」
「旅の者でございますが、道に迷ってあちこち彷徨っているうちに日が暮れてしまいました。どうしたものかと心細く思っておりましたら、こちらの灯りが見えましたので、それをたよりにここまで来させていただいた次第です。お願いです。どんな場所でも構いません。一晩泊めていただけないでしょうか?」
「うちは物置みたいな場所で、本当に雨風がしのげるだけのようなもんですけんど、そんな場所でも構いませんかな。」
「いえ、本当にどんな
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