Firewheel/ホロウ・シカエルボク
 
目と直角三角定規のような鼻と小さな口がついている、胡坐をかいた姿しか見たことがないので定かではないが、それほど身長はないだろう、よう、とおれは話しかける、女はちらりとこちらを見やるが、すぐに目線を戻す、相変わらず、おれに興味はないという具合だ…つれないね、とおれは冗談を言う、おれはこの女の声を聞いたことがない、喋れないのか、喋りたくないのかすら判らない、長くそこに居過ぎて、言葉を忘れてしまったのかもしれない、襦袢のようなものを着ているだけで、いつの時代の人間なのかもまったく判らない、もしもおれがもう少しそういった能力に長けている人間だったら判るのかもしれないが…おれに判っていることはたったひとつだ
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