夏休みの幻想/丘白月
 

ナトリウム灯も消えたままの
古びた跨線橋の下

あなたと出会ってから
夏休みの落書きが増えていく

「おはよう頑張ってね」の文字
「おつかれさまでした」の文字
すれ違い ただ文字だけに会う日々

街路樹の影はバックギャモンの模様
あなたを探すようにトンネルの
奥深く伸びてゆく

二人の囁きは賛美歌のように
コンクリートの壁に木霊する

神様は一人に一つづつ物語を創った
二人の物語が一つになるページが
少しづつ 少しづつ近くなり

列車の通る音さえ美しく閉じ込める


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