南の島で君は/Lucy
威厳に満ちて回遊する体長八メートルものジンベエザメを見上げ
まるで海の底にいるみたいだと思いながら
前の晩、公設市場の水槽の中にひしめいていた伊勢海老たちや
ひもで縛られて生きていた大きなカニを思い出した
そして初めてシュノーケルで息をしながら
ライフジャケットとフィンを使って泳げない君が水に浮き
サンゴ礁の海をのぞいた
目の前をよぎる小さなマリンブルーのさかな
黄色い縞模様の魚
無人島の砂浜に無数に落ちていた
波に削られかどがすべて丸くなった
しろい珊瑚の死骸の欠片を
君はいくつも手のひらに拾った
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