夜香/帆場蔵人
 
ひとつ 齧れば夜が欠けて
林檎は白い肌さらし
屋烏に及ぶ口笛の哀しき音いろに
艶めいて 夜の香りを染めていく

ひとは哀しく身はひとつ

ひとつ 齧れば夜が欠けて
林檎がひとつ染まるなら
林檎がひとつ砕け散る 悲鳴の音いろを
みるがいい 哀しき色はどんな色?

苦いか甘いかしょっぱいか、ひとつ齧れば
屋烏は飛んで雲隠れ 林檎は色を失った
朝陽に紛れ延びた手が林檎を高く放り投げ

林檎はひとつ、日もひとつ
















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