リンドウの妖精/丘白月
 


静かな温かい森に
種が蒔かれる
いくつもの色が
ビー玉のように跳ねて
土に消えていく

和歌を一人詠む
病気の子に薬をあげると
約束してから
巡る季節に苦い根を伸ばし
満月が岩木山を縁取る下で
螺旋にまかれた蕾が眠る

明日花が咲いたら
誰でもいいから
迷わずに摘んでいいよ
慈愛の青い花びらを

エヤミグサの妖精は
和歌を詠んでくれた娘と
命を継ぎ足した
遠い夜を忘れない


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