水源地/ただのみきや
山の斜面の墓地を巡り抜けて
今朝 風は女を装う
澄んだ襦袢が電線に棚引いて
蝶たちは編むように縫うように
ぎこちなく鉈を振るう
季節の塑像が息を吹き返す前に
キジバトの影が落ちた
泣き腫らして膿んだ一個の眼球
砕けたオカリナは土に還り
地は雨の慈愛に潤む
蛇には合掌する手はなく
微かな温もりを探して傷んでいた
沈黙と傾聴の細波に
緩やかに身を滑らせて
しとしとと ただ しとしとと
水は群れ円みを帯びる
坂道に立ち止まる
向きを変えれば登りは降り下りは上り
生の歩みと交差して
時の流れを断ち切って
夢現のあわいを行き来する
重力は虫ピ
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