路地裏の病院/中原 那由多
誰かにとっての遊びの為に
男はただひたすらに
車を西へ走らせた
誰かにとっての狩猟の為に
女はただひたすらに
カバンに荷物を詰め込んだ
路地裏の病院にて
聞き覚えのあるクラシックは
ダンプカーの騒音と排ガスにまみれ
今にも千切れてしまいそうではあるが
今日を繋ぐ鎖となって
確かにそれの一部となって
薄暗く、狭い廊下に垂れ下がる
(カッ、コッ、カッ、コッ)
合図は点滅
道路標識さながらの
エントリーナンバー206
製氷機の氷であるかのような
淡白な均一をめがけて
やり場のない
やり場のない
出来損ないの
涙をそこに注ぎ込む
腹の
中
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