寂れた町には/こたきひろし
 

その内に諦めて忘れた

母親は人手不足のままではやっていけないのでと
次は所帯持ちの職人をどこからか見つけてきた




新しい職人は腕も気っ風もよかった
おまけに男の色気もたっぷり持ってた
店はオーブンキッチンになっていたから
カウンター越しにその姿を眺める女の客が増えた

店の主人である父親は穏やかな気持ちではいられなくなった
女客だけならともかく自分の女房さえも変化を見せていたからだ
その内に大事な一人娘さえ男にいちころになってしまった

妻も娘もいつの間にか父親に興味も関心もなくしていた頃には
手遅れだった
母娘はいつの間にか所帯持ちの職人のまな
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