寂れた町には/こたきひろし
 
寂れた町の
寂れた市街地には
寂れた商店が軒を並べていた

その一角
寂れた食堂には
すっかり歳をとってしまった看板娘と
厨房に立ってるその亭主が
うまくもないまずくもない
料理を売って細々と営業していた

店頭の料理サンプルは
もう何年も放置されたままで
埃を被っている
それが客足を遠退かせる要因になっているに間違いないが
全体が寂れた町
全てが寂れた商店街では
一店だけ眩しく輝かせる訳にはいかない
そんな事したら著しく馴染まなくなるだろう

食堂を経営している夫婦は金に困ってはいなかった
むしろ使い道に困っていたのだ

まだ寂れた町が寂れていなかっ
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