幻の海/丘白月
 

夏が始まるよと
白い波をよけながら
ウミネコが鳴いている

小石を投げる私と
目が合うと振り返り
知らないふりをする

私は冷たい風の中で
冬に失くした
イヤリング探してる

見つからないと
わかってる

季節が過ぎて

あの日落とした
あなたの涙が
もう貝に変えている

あなたの声が
水平線から聴こえる
海の底で星が流れてる

海が作った風は
潮から生まれ
季節に香りをつける

私は見つける
あの時と同じ色をした
貝殻を一つ

あなたに渡すこともない
だけど命のかけら
耳に当てて鼓動を聞く



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