空の青さを知るまえに/ベンジャミン
 
 
 きみが初めて見たものは
 きっともうきみの記憶にない

空の青さを知るまえに

 この世界に生まれた命は
 涙のあじを最初に知る

わたしは夏に生まれたけれど
いまだに夏色を知らない

けれど空が青いことは
知らないうちに知っていた

 思い出せないけれど

涙のあじがわかるまえに
空の青さを知っていたと

 かってに願ってしまいます

だったらわたしの夏色は
わたしが生まれたときにもう

わたしはとっくに知っていて
わたしがわかっていないだけで

 今からでも遅くはないから

今のわたしに見える色が
わたしという色ならば

空の青さを知るまえに
涙のあじがわかるまえに

たとえ自分の青さを知っていても
それでもまだ遅くはないから

 どんな悲しみにも染まらずに

ただ青いということをそのまま
美しくわかることができたなら

 それは幸せなことだと思うのです

 

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