蠅/田中修子
陽はいま恒星となって刺繍されている どうだこの乳房この二の腕この腰回り 強い男に抱かれて妙なる美しい子を身に宿し逞しくなった閨 黒髪に大島椿油を数的塗りこんでつげの櫛で梳けば ポトッポトトトトトッ 滴るその虫 メタモルフォゼ 黒く光り強い目を放ち少年たちの王となって島で殺戮を繰り返せ 蠅の)
部屋に湧き廻る 虫の嵐とて
あなたには水のはる国がない 小さな生とそして死を見落とし続けて 朗らかなあなたには 語るべき平和も戦争も持たない あなたの持つのはただのビラでありただのプラカードでしかない あなたのなかにはなにもない
<思想その空虚><神を殺せ><王
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