バケモノ語り/立見春香
てのひらに舞い降りた
やわらかなバケモノの息は冷たく
右腕に
重過ぎる
そのための花を抱えて
植物園の温室を目指すのは
そこが
恋愛の終焉だから
それを
好ましいと思ってしまった
わたしの背中は
バケモノを背負ったまま
凍っている
薔薇の棘のようなあなたの爪を
立ててもらいたい
素直な痛みが欲しい
(だれが冷たい自由を知ってる?
(愛が冷える瞬間のあの音を?
あの恋愛の最期を告げる
消火後の煙りの匂いは
まるで全てを受け入れる
バケモノの引き攣った笑顔に似せて
甘ったるいのかもね
とてもいやらしく
もっともっとあざ
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