クレジット・ワン/佐久間 肇
 
閉じこもっていた男を開いたら、また男が出てきて困った。
そう、この男はとてもしつこい。
どれくらいしつこいかというと、
蟹味噌の最後のほうくらいに生あたたかくてイヤラしい。
そして同時に、短冊切りにした長芋の粘り気くらいにやわらかい。

(愛してます、ちゅ。)

男はひょうひょうとして、夕飯の残りのゴーヤーチャンプルーの皿の上を飛び交う。
男の次にはまた男が生まれて、その男がまた男を生んで、
この部屋は男だらけになった。
そして、その全ての男がわたしのしもべとなり、どの男も全員、女を欲して鳴きわめいた。
わたしは見捨てるのもめんどうくさくて、女をさがしに行くフリをして誤魔化
[次のページ]
戻る   Point(2)