夏の記し(三編)/帆場蔵人
1 夏雨
梅雨の長雨にうたれていますのも
窓辺で黙って日々を記すものも
ガラス瓶の中で酒に浸かる青い果実も
皆んな夏でございます
あの雨のなか傘を忘れてかけてゆく
子ども、あれも夏、皆んな夏、
皆んな皆んないつかの夏でございます
そろそろ夏は梅雨をまき終えて
蛍の光を探して野原を歩いております
***
2 夏の鶏冠
紫陽花寺の紫陽花が枯れてゆき
昼か夜か、ゆるりと池の蓮子はひらく
息をゆるりと吐くように息吹いてゆく
白雨に囚われた体から漏れるため息のよう
しかし、それは曇天を燃やしてやって来た
色褪せてゆく庭を
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