カレーの皿を割るおんな/秋葉竹
 

まじょが
カレーの皿を割っている。

いつか出逢えるあなたを
この屋上で待ちながら
もう出ない声を絞り切り
歌う歌がある。

もし空を飛べたなら〜
あなたに会いに行きますよ〜

嫌われてもいいから

カレーの匂いがする夕べ、

忘れられてもいいから

カレーの匂いがする夕べ、

街を見下ろすと
夕餉の支度で慌たゞしいおんなども、

月が高いですね?

ほうきに乗ったあなたが
月へ飛ぶ。

姿が希望だったから。

泣かないさ、憧れても。

憧れていても悪いのは
そいつのせいにして、

まじょが
カレーの皿を割っている。





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