夏/宮木理人
 
と膨張する視界に、プールサイドが遠ざかっていくように見えた
もしかするとその女の子は僕が知っている子のような気がした

覚えたてのバタフライでその子のところへ泳いでいくと
泳いでいるその時間が、ぐーっと引き伸ばされるように、なかなか向こうへ辿り着かない

やっとの思いで着いたプールサイドには
ワンピース姿の女の子が立っていた
やあ、と声をかけて見上げると
その女の子の頭はスイカに代わっていて、
それがポロッと取れて
僕の目の前の地面でグシャッと割れて真っ赤になった

すぐそばにはバケツが置いてあって
そこには花火の燃えカスがたくさん捨てられていた
誰もが夏という言葉を忘れ
季節ということも忘れ
ただただ汗をかいて項垂れていた


戻る   Point(2)