醜いか美しい/ああああ
ずれたのか意図的にずらしたのか
斜めにかぶった帽子の下のか
みの毛をかき上げてスカートのシワを伸ばす仕草が
まるで大人っぽい子供のように静かだ。
そろそろ日付が変わりそうな頃に
彼女はピアノスツールに腰掛けたまま踊り
ながら「メロディーは匂わせるだけでいいんだ。声に出す必要はない」と言った。
何度も何度もリテイクを重ねて
疲れ果てたぼくを眺めて
彼女はなぜか満足そうに笑うと
窓の外の砂漠の
空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
零コンマ一秒の狂いもない歯車のように正確な演奏を
彼女が唐突にはじめたので、ほとんど棒読みに近い詠唱を
ばかみたいに急いで追いつかせた。
疲れた
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