その時刻のことはどうしても思い出せない/ホロウ・シカエルボク
車の安全性がいろいろと問題になっているが、結局ハンドルを握るやつが駄目なら車自体に何の対策を施しても無駄というものだ、そこからさらに少し歩くと、昔友だちが住んでいたアパートの廃墟があった、そのアパートのことはありありと思い出せる、まともな人間が少なかった、夜中に叫び声をあげたり、窓から家具を捨てたりするやつらばかりだった、友達はそんななかで平然と酒を飲んでいた、一度住人の一人と夜中にばったり出会ったことがあったが、大きく開いているのになにも見ていない、そんな目をしていた…いまでも時々あんな目に出会うことがある、日常の、何気ない世界の中で、ほんの一瞬。
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