黄昏の境内で/丘白月
 

悲しい心の雨宿り

黄昏の半分は
行き場の無い気持ちの
荷物置き場

長い石段が
飽和状態まで濡れて
もう涙はたくさんと言う

眼の前で紫色した光が腰を下ろす
見上げると手が一つすっと伸びて
あの鳥居をくぐろうと言った

階段を滝のように
光が流れてくる
私をすり抜けていく

神様の声が聞こえた
境内の端で咲くツツジのように
ただ風にゆれて
優しい香りのような声が

誰かが鈴を鳴らしてる
何度も揺らして
何度も力いっぱい

大切な願い事が叶うように
赤く夕日で染まる境内に
鈴の音がいつまでも響いていた

神様が涙を拭くように



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