耐風/蜜
小さい女の子が電車の中で
スンスンと肩を揺らしながら
泣きじゃくっていた
君はママを
「いない」と教えてくれた
変わった名前だな、と思ったが
信じてみることにした
最初に出会った先頭車両から
ママを探しに最後尾まで
君と一緒に歩いたね
諦めてシートに腰を下ろした
君は私の隣に座ると
改めて君が幼いことを知る
君は名前を
「わからん」と教えてくれた
変わった名前だな、と思ったが
信じてみることにした
駅に着くと扉が開き
風が強く吹き込んだ
君はその度身震いしてたね
外の景色はあまり変わらない
永遠と思われるくらい長い距離
緑の草が風に揺れていた
この透明なガラス一枚外の風は
全身を刺すような
痛みを伴った冷たさなんだろう
扉の向こうの世界は
小さい君にはまだ
耐えられそうもない気がするよ
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