楽器の魂/丘白月
 
古いオルガン
ワックスも落ちて
粗い木目が木漏れ日に萌える

ながいあいだ
大勢の子供達を見送り
一緒に唄ってきた

オルガンの友達は
向こうのピアノの上の
メトロノーム
同じ時を一緒に刻んできた

いまはもう誰もいない
新学期には
鍵をかけられてしまう部屋

真夜中に音楽室で
同窓会がはじまる

古びた楽器たちが
懐かしがることもなく
未来を唄っている

もう弾かれることもない
だけど悲しまない

美しい音に生まれ
美しい心になったから

すべて過去のおかげだから
今は未来を想い歌う

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