痛み/帆場蔵人
あるくとおく、流れ流れて
流されてきた弱さを恨むのか
水にとけた光に問いかけた
転倒した月日の果てしなさ
ただ勘違いしていただけだ
月日は数えるだけしかなく
切り売りして歩くお前など
誰が買うというのか、痛みだけだ
残されたのは痛みだけだ、痛みは
確かな明かりではないか、痛みは
手が、足が、鼻が、背中が、
ある、と知らせてくれたのだ
倒れこみ水は冷たいと知る
転がり続けて仰ぎみた、風にうごめき
はりつめた空を割いて
花が、わっ、と、咲いて、いた
もう、歩く、こともない
地に根が満ちるような痛覚は
ひとのかたちをしていた
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