バス停 第9話/丘白月
 

梅雨は街の洗濯
山のてっぺんから屋根まで
しっかり洗ってくれる
空気さえも純水になるほどに

夜通し降った雨は朝も止まず
智子はバス停で傘をさす

雨でくもった岬の向こうから
サイレンの音がかすかに
雨に混じって聞こえた

何度も腕時計を見た
その日の朝
バスが来ることはなかった


おはよう さようならと
毎日小さくささやく
そんな ただそれだけの人
笑顔でうなずくだけの日々

そんな毎日が
この街にいればずっとつづくと
思っていたけれど

終わりは突然に
とても寒い日に訪れて
心の半分を奪っていった



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