クチナシと蜘蛛/田中修子
老賢者はどこにいる? アニマ、アニムス
グレートマザーは海となりわたしをのみこみ そして吐き出されて。
眠れない女が立ち枯れた木をみつめている
けれど その 木に 赤ちゃんの寝息が すはすは かかると
みて! ほら、簪と髪飾りがその木を
しゃらしゃら 笹にして あっという間に 五色に金銀砂子
薄暗かった深層は青闇になり 鈍色の雲がかかって そのむこうに
お星さまキラキラして
ああ、簪蜘蛛さんあなた
棚機(たなばた)の乙女が悪い魔法にかけられていたの 織姫だったのね
御覧! 彦星があなたを迎えにやってきたわ
手を伸ばし懐かしく見つめあう ふたりに うやうやしく
あのあまい香りを振りかけて差し上げたわ。
そこかしこに
クチナシ香雨真珠の
ふるふるまわりに かつて 雪の地の神がふらせたという
この列島唯一の 叙事詩に記された
銀のしずくたちのように。
※
セーターの模様の着想 鳩山郁子「ダゲレオタイピスト」より
童謡「たなばたさま」歌詞
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