雨が匂う/こたきひろし
雨はいつだって空から降ってくる
何ら
信仰も哲学も携えていない私が
その日
見上げた空には雨雲が立ち込めていた
雲の成分はほとんどが水
無数の水滴が地球の引力よって
落ちてくるから
雨
なんだろう
そこに神は介在していない
筈だ
風は空気の移動
けして
神の呼吸じゃない
無宗教
無哲学
の私だが
何も恥じてはいない
いきなり降ってくる雨に
苛立つ事がよくある
外に出ていて傘を持っていないからだった
衣服もそれに包まれた体も濡れてしまい
雨の嫌な匂いが染み込んでくるからだ
降ってきた
激しく降ってきた
傘はない
雨は強風に煽られて
持っていたとしても役にたたないだろう
それはまるで
神と一緒だ
持っていても
役に立たない
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