「雨の工場」/ベンジャミン
はるか空
最近は見上げることを
忘れていた気がする
それは足もとの水溜まりを
下を向いて避けながら歩く日が
続いているからだと思った
はるか空
そこには雨の工場があって
せっせと降らしている
世界から集めた
悲しいことたちなんかと
舞い上がった水蒸気で
こらえられなくなったら
そうして落ちてくる
だからって
今日は何となく悲しいなんて
それはきっと気のせい
そうやって降ってくる雨を
瞳に映して見上げたら
何だって悲しい
はるか空
雨の工場が今日も働いている
僕らが見上げることを
忘れないように
いつも晴ればかりじゃないことを
思い出させるように
はるか空で
戻る 編 削 Point(3)