バス停「第3話」/丘白月
 
詩的小説 バス停「第3話」

バス停で彼を待つ
もう愛してはいけない人
でも好きでいてもいいよね

遠くにバスが見えてきた
緩やかなカーブをいくつか抜けて
見え隠れしながらやって来る

すっと止まるとドアが開く
たった二段のステップのその先に
懐かしい伊藤くんの顔が見える

私に気づかない
そうね
こんな所に私は
いないはずだよね

故郷から遠く離れた街
コンタクトもやめて
大きなメガネだもの

海岸線を走って
会社が見えてきた

また帰りに乗るね
そう思いながら降りた

新しい職場一日め
上司は自分より若い女性

名刺には伊藤敦子の文字
え?あの人の奥さん?
顔をじっと見つめた
優しそうな人だった


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