ケモノの夜/ホロウ・シカエルボク
強烈な意図だけがあった、これはぞっとしないな、と俺は考えた、でもそれ以上感想を持つことはしなかった、やがて強い衝撃がやって来て、俺は一瞬天地がわからなくなった、よろめきながら目を開けるとそこは駅のホームで、時刻は深夜らしかった、俺をそこまで運んできたのだろう最終電車が、警笛を短く鳴らしてどこかへ走って行こうとしていた、俺は両手で顔を拭って、その手を擦り合わせた、自動販売機で水を買って、駅員が驚いて振り返るくらいに喉を鳴らしてそいつを一気に飲み干した、梅雨の合間の短い晴間の中に立ち込めた湿気が身体にまとわりついて、その感触はまるで盛りのついた雌の蛇のように冷たくて重たかった。
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