内出血/ただのみきや
た青大将
つわりの母の膳に乗せ
塀を越え
歩道に身を乗り出し微笑む薔薇に
怒る者もなく
色香に迷う蜂たちに交じり
そっと顔を近づけると
家の窓から女が見ている
美をすべて薔薇に吸い取られたかのよう
黴臭い古本のように
カーテンは閉ざされた
美しいもの香しいものに
魂は寛容で肉体は依怙贔屓する
幸も不幸も肴にして
飲み続ける自分のいのちを一滴まで
空虚へと捧げられた一皿の生肉
腐敗への道すがら
聞こえるのは
風が閉ざす扉の音
《内出血:2019年7月1日》
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