髪を切った夜/丘白月
 
長い髪が好きだと
ふざけて言った言葉を

教室の端っこで聞いて
私は伸ばし始めた

季節が過ぎて
あなたの近くへ
少しづつ

あなたに見えるように
少しづつ

日曜の駅であなたを見た

あなたが話しかけるのは
髪を下ろした
よく知ってる子

あんなに長かったの
知らなかった

何やってるんだろ私

日曜に一人で
道しるべを失くした私に
遠くで楽しそうにゆれる長い髪が
近寄らないでと言いたげに揺れていた

あなたは一度も気づかなかった
私なんか見ていない

ホームでベルが鳴る
もう少し下がりなさいと
駅員が叫ぶ声がする

一歩下がって思う
自殺なんかしないわ

夜 私は自分で髪を切った



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