孤独とは闘えないよ/こたきひろし
 

母親には見抜かれていた


だから
祖母がいきなり倒れてその日の内に息をひきとった時
その遺体の側で泣き出した孫をみて
集まった親類の一人が「おばあちゃん子だったからな」と声に出した時
母親は独り言のように周りに聞こえないように
それでいて私にはちゃんと聞こえるように冷たく言ったのだ
「この子供はそんな子じゃない。嘘をついてるだけだよきっと」

私はずっとずっとその声と言葉が耳の中で蝉の時雨みたいに聞こえて来ることがあるのだ
でも
そんな子供は案外沢山産まれていて
ある種の欠陥を備えながら
それなりに成長して
社会の中に紛れこんで
生涯を終えていることに
周りはほとんど気づかずにいるだけなのだ

腕力も
財力も
知力も
学力も
孤独には無力
孤独とは誰も闘えないし
闘うなんて
ナンセンス
勝てる訳ないんだよ

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