唾液の海/両性具有
 
ぼくを作った人が
無造作に捨てたあまりの木材で
ぼくは箱舟を作った

唾液の雨が降るのを待った
やがて何もかもがその中に
砂糖のように溶けていくのを見た
ぼくは小鳥の巣から踊り転げ落ちて
箱舟をせっせと水面に浮かべた
逃げ出すことを決めた夜
体は操り糸がなくても動いた
君の乳房が月になっていた
傷痕に刷り込んだ砂が
甘い夢精を教えてくれたあとで
両指が11本になって
11本目の指から
絶えず精液が零れていた

夜空に手が届きそうなくらい
沖まで流れてきた
それから
僕は盗んだ服を脱いで
裸で唾液の海に飛び込んだ
飛沫が飛んで
箱舟も僕も溶けてしまって
そんなふうにして
僕は空っぽの眠りについた




戻る   Point(1)