もえかす/うめバア
久しぶりに、酔っ払ったあの夜
「あのねえ、私、好きな人がいるのー」
いるのー、と延ばした音の先まで
彼女は駆けて、そして駆けるのをやめて
だって酔いが回っちゃうからね
また少し、前を見て話を続けたね
ちょっと前までつきあってた男の
情けなくも、もろい話を聞いて
たった今聞いた新しい男との
のろけ話にチリチリして
また明日もへらへら笑って飲みに行ける
嫌になるくらい
そう思っていたから
せっかくつくった友達も
交わした連絡先だって
惜しげもなく捨ててしまった
数十年たって
花火の翌日の燃えかすみたいな思い出を
拾い集めるなんて、気がつかなくて
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