初夏のリズム/長崎螢太
ソーダ水の
薄い、みず色に光る泡を
優しく、かき混ぜ、溶けるように
わたしの過ぎた惑いを
散らしていった
初夏の早朝に舞い降りる
冷気のビロードで
肌がひんやりする感触が
心地よい
胸の中の廃園で、息づいている
捉えることのできない
曖昧で、あやふやなものが
夏の胎動を感じて
騒めいている
よろこびも、かなしみも
時がたてば
それほどでもなくて
耳の奥に響いているものは
夜明けの窓をたたく
雨の
複数の異なるリズムだけ
ゆっくりと
わたしから失われていく
繰り返された、きせつの記憶
巡り、交差し、そしてループする
いくつもの風景
遠く、
ブランコがかすかに揺れて
気が付けば、いつの間にか
少年の私が
空を見上げている
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