アンチ紫陽花/あおいみつる
バスに飛び乗り、駅前の床屋で散髪を済ませた
店員との会話は「痒いところありませんか?」「ああ、大丈夫です」
これだけで済むところが気に入っている
店を出て、バス停の前のドトールでブレンドを頼み
目の前のタリーズコーヒーを眺めながらコーヒーをすすった
夕暮れの雨に濡れる街並はいつもより奇麗に見えた
ドクダミの花の十字架の詩を書いた詩人を思い出した
瞬きの詩人、水野源三氏である
他人と意思疎通をする手段が瞬きだけだった
敬虔なキリスト者で詩人でもあり瞬きで詩を書いた
バスに飛び乗り家路に着いた
「しょうがない雨の日はしょうがない♪」と
若き日に聞いた歌の一節を口ずさみながら・・・
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