鳩と修司/ただのみきや
 
浮き沈む鳩の斑な声に文を書く手も唖になり
犬連れの人々が屯う辺りへ角張った眼差しを投石する
紙袋を被る息苦しさ己が手足を喰らう祈り
内へ内へと崩落しながら書くほどに死んで往く


薄緑のカーテンの裏を歩く蟻の影は引き伸ばされて
タブラに合わせて踊る指先と目と 冷たい臥所
部屋の隅にぼんやりと 蕾のまま石化した時間
どこからか歌うような痴話喧嘩が聞える


 一筋二筋 消しゴムで擦ること
 世界からの強奪 個々の主観による凶行


テニスコート沿い杉の並木を縫うように鳩は啄み
道を挟んだ垣根からツツジが覗く
風に頬杖をついた老女の眼差しが
レジ袋いっぱいの荷物を
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