血の詰まったただの袋/こたきひろし
 
ーダーがAだった
クラスには良心と正義を持った奴等は確かにいなかった
ヘルプは存在しなかったのだ

Aはボクシングをやっているだけあってガタイが凄かった
口数は少ないが絶えず周囲を威嚇するケモノような存在だった

人を人と思わない眼をしていて俺は怖くて仕方がなかった

その日の朝は体育館で全校集会が開かれる日だった
生徒たちがぞろぞろと体育館の方へ移動していた
運悪く俺はA達の後ろを歩いていた
その時
Aがいきなり立ち止まり俺の方を振り返ると俺の名前を叫んだ
同時に俺はみぞおち辺りに激痛を感じてその場に倒れてしまい身を転がした
Aはふてきな笑いを見せた
スポーツマンには健全な精神が宿るなんて嘘だ

周囲をは誰一人俺に救護をしてくれなかった
俺は何よりもその事に苦悶を重ねた

俺はAのサンドバックにされた
血の詰まった袋ではなくて
砂袋にされたのだった

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