めぐり越える手/木立 悟
 




いつもよりかすかに
いつもより明るい
夜の水のさえずり
手のひらの暗がり


鏡のなかにひらく傘
夜に向かう硝子の群れは
陽の名 月の名 
星の名を問い


果物の皮
夕暮れの匂い
低く低く在る曇
常に冬の曇


それはそのようでいてそうではない
閉じたままの窓の明るさ
消えて無くなる程の明るさ
音はそれらの端に触れて降る


遠く泣きつづける巨きな機械を
夜歩くものたちがなだめている
ひとりの子 ひとりの子
離れて歩く ひとりの子の群れ


夜の花の香
覆いの隙間
双つの背中
標を越える


物陰から光を見つめる子ら
夜の灯を追い 曇間の陽を追い
真昼に眠り 午後に涙し
手をつなぎ 月を囲む


















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