まだすこし守備がよわいね/万願寺
滔の海を見ました。かれのたましいはそこに転がっているように思えたコンクリートの路地裏があったのだけど、そうじゃなくて、本当は海みたいに手でかたちづくれないものの合間に挟まっているんだと思えました。残されたものの気持ちを考えてと言われた。一生傷になると言われた。そんなことないのは、わたしはよく知っているんだけど、なあ、と、思いながらじゃあここで「でも死んだ友達のことは三年くらいで整理がついて、今はもう思い出すこともありません」と言ったら、不憫な人間と思われるのかしらん。残されたものが傷を受けることなんて、残されたものの勝手じゃないでしょうか。それは選択であって被害じゃない。わたしだって加害はしたくな
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