倒れゆく馬をみた/帆場蔵人
 
あれはいつだったか
陽炎にゆれながら倒れゆく馬をみた
北の牧場をさまよったときか
競馬場のターフであったかもしれない
或いは夢か、過労死の報を聞いた
快晴の街角であったかもしれない

或いはあの川面にぶつかったときか

なぜ、おまえが倒れたか
なぜ、おまえが息絶える
その眼に何がうつろうか
とおくとおくたくさんの
蹄のおとが地をゆらして

あぁ!
もう狂い馬だ、狂い、馬だ
尻に火をつけられて、幸運の前髪を
掴め!と急かされる、皆、狂い馬だ
産めよ、増やせよ、やめてくれ
狂い馬!来るいまだ、走れっ!
鞭がはいる、無知なのがいる
焼き尽くされて、いく、理想と
[次のページ]
戻る   Point(7)