複雑性PTSDという病、メンタルハラスメントにあってからの再発と回復/田中修子
 
い海の音、そして亡くなった子のうつくしい思い出である。
私は死後、彼女たちがいったところとは別のところにいくだろうと夢想する。しかし、いまここに私の脳もからだも生きている。

回復して、収容所から一歩出、雨の音が美しく聞こえ、気に入った傘の色を見ながら、雨に黄色い花がしなだれ落ちるのを歩いて、振り返るとき、正常な人こそが私を狂気に追いやった人間であったことを思い知る。そして、いわゆる健常者が、「私はぜったい正常だ」と言って自らの狂気から目をそらす弱い人にしか見えないことがある。むしろ、収容所のなかで、生きようと、病識を得ようとあがく人こそが、大いに正常なのではないかすら、と思うこともある。

PTSD患者は、みな戦友だと思っている。それぞれが傷つき、攻撃的になったり依存的になるため、あまり近づくことがかなわない。-それでも戦友だ。私に起こったことが戦友たちの今後の知識になればいいと願っている。
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